子どもと一緒に行く海外旅行では、旅先への「アクセスのしやすさ」や「現地での交通手段の選択」が、旅のスムーズさを大きく左右します。 大人だけの旅行と異なり、子どもの体調や気分、疲れ具合に配慮した移動計画が必要になるため、目的地までの移動時間や手段、現地での移動の自由度を考慮したうえで、行き先を選ぶことが大切です。 アクセスが良い=旅が快適、というだけではありません。移動に余計なエネルギーを使わないことで、子どもとの時間や体験にもっと集中できるようになります。 限られた日数のなかで、ストレスを減らし、家族全員が満足できる旅にするためにも、「行きやすさ」と「移動しやすさ」は、行き先を選ぶうえでの重要な基準となります。
出発地から目的地までのアクセス
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小さな子どもを連れての長時間移動は、想像以上に体力と気力を消耗します。私は3歳、4歳の子どもを飛行機に乗せ、長時間にわたるフライトで子どもの退屈さを軽減したり泣き声をおさめたりするために、何度も席を立って機内を歩き回った苦い経験があります。 正直、「10時間近いフライトはもう二度としたくない」と感じたものの、その後も何度か海外旅行を重ねてきました。それでも旅先での楽しさはやはり格別で、やめられなかったのでしょう。 この経験を通して感じたのは、「フライトの大変さと旅の楽しさのバランスは、旅行の満足度や費用対効果にも関わる重要な要素」だということです。 5歳以降になると、子どもも好きなビデオやテレビ番組を観て落ち着けるようになり、私は事前にDVDを焼いて持ち込むなど、できるだけ退屈しない工夫をしました。 そうした経験から言えるのは、可能であれば直行便がある国・都市を選ぶことが、移動ストレスを大幅に軽減する最善策だということです。 特に12時間以上のフライトになる場合、乗り継ぎの有無が旅全体の印象を大きく左右するポイントになります。 子どもの年齢や性格によって対応も異なりますが、「長時間フライトの過酷さを甘く見ない」ことが、楽しい旅行の第一歩となるのです。
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現地空港からホテルや滞在地までの移動方法も確認しておきましょう。公共交通が整備されている都市であれば鉄道やシャトルバスが便利ですが、荷物が多い・子どもがぐずりやすい場合には、タクシーや送迎サービス、レンタカーの利用が安心です。
現地での交通手段の選択肢
電車・地下鉄・バス
★ 特徴
都市部での移動に便利。料金も比較的安価。
★ 子連れ向き度
◎(都市型観光向け)
タクシー・ライドシェア
★ 特徴
扉から扉への移動が可能。英語圏以外でも使いやすいが、注意を要する。
★ 向いている家族
◎(移動の手間が少ない)
レンタカー/キャンピングカー
★ 特徴
自由度が高く、郊外や自然エリアの観光に最適。
★ 向いている家族
◎(家族旅行に最も柔軟)
ツアーバス/送迎サービス
★ 特徴
観光と移動がセットになっているため楽。
★ 向いている家族
○(初心者・短期旅行向)
旅行先を選ぶ際のチェックポイント
3-5)年齢別の旅行先
子どもとの海外旅行では、子どもの年齢によって楽しめる旅のスタイルや目的地が大きく変わります。 長距離移動の負担は、年齢が上がるほど軽減される傾向にあります。旅先の医療体制・衛生環境は、すべての年齢で重要です。 子どもがどの年齢であっても家族のサポート・知識・準備が十分であれば年齢に関わらずどの旅先でも楽しむことを可能とします。 参考として一般的な旅行先のパターンを記述しておきます。
0〜2歳:乳幼児期
★ ポイント
キーワードは、日常ペース・安心・少ない負担。
この年齢帯が一番親が一番負担を感じます。子どもに明確な意識はないので、親が可能な限り日常の生活リズムを崩さない環境を作り出すことが最優先になります。
★ 旅行スタイル
短時間のフライトで行けるリゾート滞在や滞在先でのんびり過ごせるオールインクルーシブ型施設、キッチン付き宿泊施設がターゲットになります。 特に、医療体制が整っている都市部はおすすめのエリアになりますが、親が先のポイントを確保できるのならばどのような場所でも良いとShizengateは考えます。
3〜5歳:未就学児
★ ポイント
キーワードは、子どもの柔軟な遊びの取り込みと親が子どもを見守るサポートの強化になります。この時期の子どもは気分が変わりやすく疲れやすいため、スケジュールに十分な余裕を持たせることが非常に大事です。
★ 旅行スタイル
テーマパーク+ゆったり観光 or レンタカーで自然巡りなどが考えられます。
少しずつ行動範囲が広がる時期なので、動物園・水族館・テーマパークなど、子どもが楽しめるスポットを多く取り込むのがおすすめです。Shizengateでは、この旅行スタイルが中心になります。
6〜8歳:小学校低学年
★ ポイント
キーワードは、子どもの「体験・発見・学び」です。
移動やアクティビティにもある程度耐えられるようになり、レンタカー旅行がぐっとしやすくなります。
★ 旅行スタイル
自然体験×文化体験ができる場所。
旅の記憶がしっかり残る年齢。自然や動物とのふれあい、簡単な異文化体験などを取り入れると印象に残りやすい。
9〜12歳:小学校高学年
★ ポイント
キーワードは、子どもたちの冒険・異文化との接触・自立心の向上になります。
日本語以外の言語との触れ合い体験させる絶好の時期かと考えています。
★ 旅行スタイル
都市と自然のハイブリッド旅や学びのある旅(歴史・科学・環境)がおすすめです。
自分の興味・好奇心がはっきりしてくる年齢で、現地の人との交流や、現地の食文化・生活スタイルを体感できる旅行が適しています。
3-6)子どもとの海外旅行を楽しめる国
一般的な選択条件
子どもと一緒に行く海外旅行では、「楽しさ」以上に「安心・安全」が最も重要なポイントです。 ここに一般的に言われている「子どもと安全な旅行ができる渡航先」の基本要件を上げます。
そして、以下の追加要因も考慮するとより確実、安全な渡航先の国が見つかります。
しかし、ここまで考慮しまうと行ける国の候補が極端に少なくなってしまいます。
なので大事なことは、どのような要件が自分たち家族に必須でどの要件が注意すべき要因なのかを見極めることが大事なことです。
最終的に大切なのは「親の判断」
子どもと一緒に行く海外旅行先を選ぶのは、実はとても難しいことです。 楽しい場所を探すだけでなく、「安心・安全」であることが何よりも大切な条件となるからです しかし、あまり安全性ばかりに気を取られてしまうと、「それなら無理して海外に行かなくても、日本国内で十分なのでは?」と感じてしまうかもしれません。 確かに、日本人にとって、日本以外の国で“万全の安全”を期待することは、現実的には難しい面もあります。 ですが、リスクや予期せぬトラブルにどう向き合い、どう対応するかという経験こそが、子どもにとっての成長の糧になるとShizengateは考えています。 そしてそれらは、親にとってもまた学びのある機会・体験・成長になるはずです。 上で掲げた「子どもと安心して旅行できる国」の要因を考慮しそれらを評価マトリクスに基づいて分析した結果、 安全性や医療体制、交通インフラなどの観点で評価が高い国ばかりになってしまいました。 以下が評価が高くなった国々です。
これらの国は、基本的な安全性と親子旅行への適応力が高く、安心して訪れることができる代表的な国々です。 一方で、シンガポールを除いたアジア諸国や、ハワイ以外のアメリカ本土(例:ロサンゼルスやアリゾナなど)は、評価項目の観点では上位には入りませんでした。 私自身の体験として、これまでに評価上位国であるオーストラリア、ニュージーランド、シンガポールを訪れていますが、実際の旅行経験からも、これらの国々の評価結果には納得します。 しかし同時に、私は評価上では上位に出てこないアメリカのロサンゼルスやサンフランシスコ、アリゾナ、またアジアのタイ、バリ島、セブ、フィリピン、香港などにも子どもと一緒に旅行してきました。 どれも多くの日本人旅行者に人気のある場所ですが、「安全性」という評価軸で見ると、マトリクス上はやや下位に位置付けられてしまいます。 では、なぜ私がそれらの国を選んだのか? それは、自分自身が過去に訪れたことがあったり、住んだこともある国だったからです。現地の事情にある程度精通しているという経験が、リスクを大きく減らす要因となりました。 つまり、安心が最優先であることは間違いありませんが、経験や事前準備によってリスクを下げることができるなら、訪れる国の選択肢はもっと広がるのです。 子どもと一緒にどの国へ行くか?その選択の最終責任は親にあります。 重要なのは、評価マトリクスや条件項目をきちんと理解し、自分たち家族の経験値や状況に照らし合わせて、「自分たちにとっての安心・安全とは何か」を考えることです。 そのうえで、旅先を選び、準備をし、リスクに備える。 それが、子どもにとっても親にとっても意味のある海外旅行を実現する一歩だと思っています。 最終的に大切なのは「親の判断」だと考えます。
3-7)旅行の暫定予算の確定
暫定予算の全体像を把握する
この章で「目的」「旅行のスタイル」「移動の交通手段」「旅行先」を決める目安をお話しました。 次に、考えるのが「旅行の暫定予算の確定」です。あくまで暫定なのでいくらまでが可能なのかをまずは考えます。 暫定予算額により、旅行期間、などの目安が決まってくるかと思います。 現実的な予算を把握しておくことで、無理のない旅程を組むことができ、現地でのトラブルや予想外の出費を防ぐことにもつながります。 旅行のプランを創る上で、日程が重要な項目になるのですが、このガイドでは次の章の「第4章 渡航準備」後の「第5章で「日程の決め方」で日程を考えていきます。 ここでは、旅行の暫定予算を計算いていく上で考慮すべきポイントを紹介します。 あくまでも暫定予算なので詳しく調べる必要はなく代表的な高めの金額で算出します。
航空券(往復)
国際線航空券は、シーズンによって大きく変動します。燃油サーチャージや空港使用料も含めた総額を調べましょう。 子ども料金の有無や、座席不要な乳幼児の扱いも確認が必要です。
宿泊費
家族向けのホテルやアパートメント、バケーションレンタルなどの宿泊スタイルにより 価格は異なります。子どもの年齢によっては添い寝が無料のこともあるため、施設の条件を確認しましょう。
現地移動費
レンタカーを使う場合は、車両レンタル代、保険、ガソリン代、駐車場代、高速道路料金などを含めた予算を立てます。公共交通機関を使う場合は、乗車券の購入費やパスの価格を調べましょう。
食費
外食中心か、自炊を取り入れるかで大きく変わります。1日あたりの目安額を算出し、滞在日数をかけて計算します。
アクティビティ費
観光地やテーマパーク、体験型アクティビティの料金も忘れずに。子ども料金の設定や、無料のスポットの活用も検討しましょう。
入出国関連費や旅行保険
海外の入出国に費用がかかる場合があります。費用、手続き等は国により違いますが、次の「第4章 渡航準備」で説明します。 ここではおおまかな金額等と調べます。 子ども連れでは、旅行保険がとても大切な項目になります。医療費補償の内容や携行品補償も含めて、家族全員分の保険料を算出します。 くわしくは、「第8章 海外旅行保険と安全対策」でお話します。
その他費用
SIMカードやWi-Fiルーター、日用品の現地調達費、予備費(全体の5〜10%程度)なども考慮しておきましょう。