第10章 海外旅行保険と安全対策
海外旅行は、楽しさと感動に満ちた体験であると同時に、思わぬトラブルが起こる可能性もあります。特に子ども連れの場合、体調の変化、けが、盗難やパスポート紛失など、備えておくべき事柄は少なくありません。 この章では、家族旅行を安全に、そして安心して楽しむために欠かせない「海外旅行保険」と「安全対策」について説明します。 安全対策は「起こるかもしれないこと」に備える地道な準備の積み重ねです。面倒に感じるかもしれませんが、一度仕組みを理解し、旅のパターンに合わせて準備することで、旅行が格段に安心かつ快適になります。 保険選びも安全対策も、「難しそう」と感じると思いますが、まずは基本だけでも抑えて、一歩を踏み出してみてください。
10-1)海外旅行保険の選び方
保険に加入する最大の目的は、「万一」のトラブルが発生した時に、精神的にも経済的にも事前に安心を購入しておく事です。
特に子ども連れの場合、病気やケガへの医療補償は必須です。また、キャッシュレス診療の可否、救援者費用、持ち物の盗難や破損補償なども重要視されます。
補償金額の多さに目が行きがちですが、実は「補償範囲の広さ」が大きなカギです。一見すると分かりにくい保険内容ですが、一度しっかり理解すれば、自分に合った保険を選ぶのは難しくありません。
なお、クレジットカードに付帯している旅行保険を「これで十分」と考える方もいますが、Shizengateではクレジットカード付帯保険を基本的に「ないもの」として考え、任意保険にしっかり加入することを推奨しています。
理由は、クレジットカード保険の内容が分かりづらく、補償対象が限定されていたり、申請の手続きが煩雑だったりするためです。
もちろん、カード付帯保険をよく理解して使いこなせる方であれば、補償の足りない部分を任意保険で補う方法も費用効率の高い選択肢となります。どちらにせよ、自分たちの旅に合った補償項目を把握し、慎重に保険を選ぶことが大切です。
旅行保険の選び方のポイントは、旅行の行き先、期間、現地の医療事情に応じて、どの補償項目を重視すべきかを見極めることです。
海外旅行保険を選ぶ上での最大のポイントは、どの補償項目をどこまでカバーするかを「事前に理解し、比べて選ぶこと」です。
以下に、Shizengateが特に重要だと考える主要補償項目と、それぞれの解説・判断ポイントを紹介します。
★ 保険に加入する最大の目的は、「万一」のトラブルが発生した時に、精神的にも経済的にも事前に安心を購入しておく事
★ 海外旅行保険を選ぶ上での最大のポイントは、どの補償項目をどこまでカバーするかを事前に理解し比べ選ぶ事
宿泊先の種類
海外治療費補償(疾病治療費・傷害治療費)★ 重要
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個人的な見解ですが、海外旅行保険で一番重要な項目は海外治療費補償です。 なぜ重要かと言うと、日本の健康保険書は海外では使えません。海外の治療費は想像を越える高価なものになります。 旅行中に、病気やケガをして海外現地で治療を受けた場合は、その金額の高さは人生を失うほどの感覚です。 疾病治療費補償は、病気になった場合や病院での治療費が補償されます。 傷害治療費補償は、ケガをした場合、病院での治療費が補償される費用です。 保険によって「治療費に治療・傷害が含まれているもの」、「疾病治療費・傷害治療費の補償金額が分けられているもの」などさまざまな補償範囲があります。 最近では、治療に日本からの救援費が含まれている保険もあります。 海外旅行では、死亡する確立よりも病気やケガをする確立の方が断然高いです。 また、海外治療費補償の内容を確認することは必ずしてください。 疾病治療費、傷害治療費に、大きな制限などがないかをじっくり比較することが大事です。 土地感がない海外現地で、病院を探したり症状を説明することは非常に難しいことです。 万が一、病気やケガをした場合の日本語による現地対応サービスの有無も、保険選択の重要なポイントです。 この項目の補償範囲が、保険料の安い高いを決めていると言っても過言ではないと思います。 |
緊急歯科治療費用補償特約
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ほとんどの海外旅行保険では標準で歯科治療費用が対象になっていません。 緊急歯科治療費用(海外旅行中に、急に歯が痛くなった場合の応急歯科治療費用等を補償する)などが必要な人は、標準に含まれている保険を探すかオプションで追加する必要があります。 |
キャッシュレスメディカルサービス★ 重要
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キャッシュレスメディカルサービスは、現地での治療費がキャシュレスで受けられるサービスです。 海外で突然、高額な現金やクレットカード支払いは難しい場合があります。 そこでキャッシュレスで治療などが受けられるキャッシュレスメディカルサービスは海外旅行者にはありがたくShizedngateで必須的な項目と考えています。 ただし、キャッシュレスサービスを受けられるサービスなどが制限されている場合がありますので内容をしっかり事前に調べておくことが必要です。 |
死亡保険金(傷害死亡・疾病死亡)
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死亡保険金は、字のごとく保険をかけた人が死亡した場合に支払われる保険金。 疾病死亡保険は病気が原因で死亡した場合に、傷害死亡保険はケガが原因で死亡した場合に、保険金が支払われます。 疾病死亡の場合は、事前告知がしっかりお告知されていることが条件となります。 よくクレジットカードの付帯サービスの海外旅行保険はこの項目の金額が目立つように表現されている場合があります。 人それぞれ生活している立場や環境があるのでなんとも言えないのですが、海外治療費補償ほど重要な項目ではないと感じています。 家族を残してひとりで海外旅行や家に大事な家族を残して旅行に行った時は、それなりに考える項目なのですが海外旅行保険では、どの保険会社もそれほど差がない価格帯になっていることからもわかるように海外旅行保険比較におけるキー項目ではないのではないかと感じています。 |
傷害後遺障害保険金
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傷害後遺障害保険は、保険をかけた人が海外現地で病気やケガした後、後遺障害が残った場合に保険金が支払われる保険です。 疾病傷害後遺障害保険は病気が原因で後遺障害が残った場合、傷害後遺障害保険はケガが原因で後遺障害が残った場合に保険金が支払われます。 この項目も海外旅行保険の中では、どの保険会社もそれほど差がない価格帯になっていることから判断して海外旅行保険金比較におけるキー項目ではないのではないかと思います。 |
救援者費補償
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救援者費補償は、海外旅行中にケガや病気で入院した場合に、日本から親族などが現地に向かう際の交通費と現地での滞在費が補償される保険です。 この補償項目は、海外旅行傷害保険の特徴でもあります。 昔はオプション設定されていた項目なのですが最近では、治療費と抱き合わせで標準項目として設定されている保険が多くなりました。 この傾向から考えても、選定の上では重要な項目なのかもしれません。 |
賠償責任費補償 ★ 重要
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賠償責任費補償は、誤って人にケガをさせたり物品に損害を与えた場合に保険金が支払われる補償です。 この項目は、海外旅行においては重要な項目の一つです。 生活していない海外で何らかの損害を与えてしまったときは、精神的にも苦痛になります。 しかしながら、この項目はどの保険会社もほぼ同等の価格帯になっています。 賠償責任補償は、補償額ではなく支払い条件、補償条件などの内容が比較項目になります。 特に自己負担金額があるのかないのか、負担する場合はいくらなのかを比較することが重要です。 |
携帯品損害費補償 ★ 重要
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携帯品損害費補償は、持ち物などが盗難に遭ったり破損したりなどの損害を受けた場合に損害額が補償される保険です。 保険会社によって保険金額が違うので比較する上では、重要な項目になります。 また、支払い条件等も保険会社によってさまざまななので、どのような盗難、非対称物などを事前に調べておくことが必要です。 自分の持参する物が高価な場合は、この補償金額をオプションで増額することも検討のひとつです。 |
航空機寄託手荷物遅延費用補償
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航空機寄託手荷物遅延費補償は、航空機に預けた手荷物の到着が遅れたり紛失した場合に関連する経費などが補償されます。 これも海外旅行傷害保険らしい項目です。 海外では、航空機に預けた手荷物の到着が遅れたり紛失したりすることが起こりえます。 私も一度、出発地に荷物が置き去りにされていたことがありました。 この項目も、保険会社によって金額が相違しています。 オプションとしている保険も多くあります。 どのような場合に支払われるかなどを事前に調べておくことが必要です。 |
航空機遅延費補償
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航空機遅延費補償は、航空機が遅延・欠航し代替機を利用できない場合の宿泊費、食事代等の費用が補償される保険です。 オプションとして用意されている場合が多いです。 LCC航空会社では、航空機遅延や欠航による代替機や補填を実施することが極めて期待できないのが現状です。 大手航空会社ではなくLCC等の諸経費を削減している航空会社を利用する場合、自分の予算と照らし合わせながら検討する項目だと思います。 |
10-2)現地の医療機関の確認
子どもは慣れない環境で体調を崩すことも多く、突然の発熱やケガなどに備えて、いざというときの医療機関の把握は必須です。 現地の医療機関の情報は事前に必ず確認しておく必要があります。 Googleマップなどを活用して場所を確認し、紙またはスマホにメモしておくと安心です。医療機関の連絡先や受付時間、現地での受診に必要な書類も事前に調べておくことをおすすめします。 ポイントは以下の通りです。
- 宿泊地の近くに小児科や総合病院の有無。
- 日本語または英語が通じる医療機関の有無。
- 保険会社が提携している病院のリストを入手。
- キャッシュレス診療が可能かどうか。
10-3)トラブル時の対処法の確認と確定
盗難・紛失・事故など、トラブルが起きたときの連絡先や対処フローは、出発前に家族全員で共有しておくべき重要事項です。パスポートを紛失した際の日本大使館・領事館の所在地、警察や保険会社への連絡方法、クレジットカードやスマートフォンの停止手続きなど、基本的な対応を事前にシミュレーションしておくことで、冷静に行動できます。 盗難・紛失・事故など、トラブルが起きたときの連絡先や対処フローは、出発前に十分に調べておくべきです。海外でのトラブルは、情報不足や焦りから対応が遅れ、さらに状況を悪化させることもあります。そこで重要なのが、トラブル時の対応フローを「旅行前に決めておく」ことです。 「緊急連絡先カード」を作成し、家族全員が持ち歩けるようにすると安心です。 また、基本的な対応を事前にシミュレーションしておくことで、冷静に行動できます。
- パスポートを紛失した際の対応(大使館・領事館の連絡先)
- 現地警察・保険会社への連絡方法
- クレジットカードやスマートフォンの停止方法
- 子どもが迷子になった場合の対処法
10-4)子どもの安全対策と現地で気をつけたいこと
海外旅行では、大人が思っている以上に子どもは環境の変化に早く順応しますが、このことにより小さな油断をし思わぬトラブルを招くことがあります。 ここでは、子どもの安全を確保しながら楽しく過ごすために、親として気をつけたいポイントを具体的に紹介します。 海外での子どもの安全対策は、「治安、交通、衛生、気候、緊急時対応」の5つの柱で考えると整理しやすくなります。 親がしっかりとリスクを把握し、事前の準備をすることで、旅先でのトラブルを最小限に抑え、安心して家族旅行を楽しむことができるでしょう。
① 治安と防犯の基本をおさえる
国や地域によって治安状況や文化的な注意点は大きく異なります。子連れの場合、夜間の外出は控え、人通りが少ない路地や歓楽街は避けましょう。 また、以下のような点にも注意が必要です。
- 子どもに名前・連絡先・ホテルの名刺を持たせておく。(迷子対策)
- 必ず保護者の視界の範囲に子どもを置く。
- ホテルや観光地では貴重品を目立たせない。
- スマホやタブレットに緊急連絡アプリや翻訳ツールを入れておく
② 交通事情と移動時の注意
現地の交通ルールは日本と大きく異なる場合があります。特に東南アジアなどでは歩道が未整備な場所も多く、車優先の地域もあります。
- タクシーやバス利用時にはドアの開閉や飛び出しに注意。
- レンタカー利用時は子どもの安全装備を必ず確認・使用。
- チャイルドシートやベビーカーの持参・レンタルの確認。
③ 衛生・食べ物・水への対策
日本に比べて衛生状態が悪い国では、子どもの体調に直結します。
- 水道水は飲まず、ペットボトルの水を使う。
- 体調が悪ければ、生野菜や火の通っていない料理は避ける。
- 飲食時にはウェットティッシュや除菌ジェルを常備。
- 常備薬(解熱剤、整腸剤など)や体温計を持参。
④ 気候と紫外線への備え
子どもは大人以上に暑さや寒さ、強い日差しに弱いため、服装や日焼け対策は重要です。
- 帽子・サングラス・日焼け止めを必ず準備。
- 急な気温差に対応できるよう薄手の羽織り物を用意。
- 水分補給をこまめに行い、脱水症状を防ぐ。
⑤ 子どもが迷子になったときの行動
どれだけ注意していても、万が一迷子になることはありえます。
- 子どもに「迷子になったら近くの店員や警察に声をかける」と教えておく。
- ホテルや観光地のスタッフに協力を依頼。
- 危険性もあるのですが、現地の言語で書かれた「この子は迷子です」カードなどを用意しておくのも一案。
現地の治安、文化的な習慣、衛生状況などを把握しておくことで、多くのトラブルは未然に防げます。 外務省の「海外安全ホームページ」や大使館の発信する注意喚起情報を活用しましょう。